JR外房線の大原から、いすみ鉄道で上総中野までやって来た。
房総半島の東側から、真ん中まで来たことになる。
上総中野から、房総半島の西側にある五井までは、小湊(こみなと)鐵道が通っている。
小湊鐵道は、千葉県の上総中野と五井を結ぶ私鉄だ。
1925年に開業した。
房総半島内陸の振興を図るために作られた。
全18駅で、所要時間は約1時間半。
車両は気動車で、2両か3両の編成となっている。
今回乗った車両は、1961年から使われている車両だ。
車両と同じオレンジのロングシートや、「日」の字の窓が、昭和を感じさせる。
今回の車両は、ほぼ全ての窓が開いていた。
走り出すと、そよ風が抜けていく。
スピードが上がると、風の勢いも上がる。
また、気動車のエンジン音と、車輪がレールの継ぎ目を走る音が、大きく聞こえる。
さらに、外の匂いも感じられる。
特に、林やトンネルで、自然の匂いが鼻孔を刺激する。
視覚だけでなく、様々な感覚でローカル線を楽しめる。
窓から、風が絶え間なく入ってくる。
林に差し掛かると、風と一緒に澄みきった匂いがする。
いくつかトンネルを抜ける。
ひやっと冷たい空気と湿った匂いが、車内に充満する。
エンジンの音やレールの継ぎ目の音が、より大きく響いて聞こえる。
トンネルは、外とは全く違う感覚がする。
養老渓谷に着く。
ハイキングのスポットとして有名なためか、乗降客が多かった。
列車は、林の中や山に囲まれた田園を走っていく。
渓谷は、窓が開いているとスリルが倍増する。
窓から顔や手を出さないように気を付けつつ、写真撮影した。
人の気配がない駅が多い中、月崎は違った。
乗ってくる人が多く、駅前にはヤマザキショップもある。
チバニアンという観光地があるため、利用者が多いと思われる。
その後、列車は水田が広がる中を走っていく。
田園の向こうには山や森があり、緑豊かなのが分かる。
育ち始めた苗が、緑の点々を描く。
しかし、上総牛久に差し掛かる直前で、景色が変わった。
駐車場にビル、アスファルト。
大原からずっと自然の中を移動してきた私にとっては、久々に見る人工的な景色だ。
上総牛久で、たくさんの人が乗ってきた。
駅前には、商店や住宅が建ち並ぶ。
ホームの一角には、旧型車両が停まっている。
上総牛久を過ぎると、しばらくは建物が見られるが、再び田園地帯に入っていく。
それでも、上総牛久以前の地域に比べると、民家が多い印象を受ける。
駅によっては、田園の向こうの丘陵地帯に、びっしりと家が建つ光景も見られる。
五井のふたつ手前・海士有木辺りでは、田園の向こうに工場の煙突が見える。
都会や海が近いことが分かる。
同じ田園地帯でも、先ほどまでの山や森のあった所とは異なった印象だ。
この難読駅名の由来は、ふたつの集落(漁夫の集落「海士」と有木城の集落「有木」)の名前を足したものと言われている。
終点が近くなると、田園は減り、ビルが増えていく。
左から、JR内房線が近づいてくる。
五井に到着する。
たくさんの人が降りて、階段を上っていく。
車両の切り離し作業に、多くの人が注目する。
五井の駅前には、商業ビルが多く建つ。
道や区画が整備されている。
少し前まで水田の中にいたのが、信じられない。
五井から千葉までは、JR内房線で約20分で行ける。
今回は、房総横断乗車券(2千円)を利用した。
大原から上総中野経由で、小湊鉄道の五井までを一枚で乗り通せる。
今回の本来の額は2,400円だったが、この乗車券で400円安く乗れた。
小湊鐵道は、窓から風を感じつつ、田舎から都会までを移動できる路線だ。
2024年5月乗車