千葉のローカル線・いすみ鉄道の大多喜からは、鉄道の博物館に行くことができる。
いすみポッポの丘という、屋外型の施設だ。
大多喜からは、タクシーで約10分かかる。
入園料は5百円。
田園を見下ろす高台に、引退した車両が並ぶ。
低い丘と高い丘の2ヶ所に、車両が置かれている。
国鉄車両も私鉄や三セクの車両もあり、引退時期が昭和のものもあれば平成のものもある。
注目すべき車両がたくさんあるので、いくつか絞って説明する。
低い丘にある。
昭和の頃に活躍した国鉄の電気機関車だ。貨物車両を3両牽引している。
時間によっては、走る姿を見ることができる。貨物車両に入って、走りを体感することもできる。カーブした短いレールを、重厚な音を立てて走る。
昭和の電気機関車の走行を、半世紀以上経った今、体感できる。
高い丘にある。
昭和から平成にかけて活躍した、寝台特急2両が、展示されている。
オロネは車内の両サイドに折り畳み式の寝台を設置した車両で、オハネフは車内の片側に寝台を設置した車両だ。
寝台には入ることができ、寝心地を体感できる。
車内では、ラストラン時のアナウンスが流れている。
最後の運行ならではの車掌からの挨拶や、停車駅と到着時刻の放送が聞ける。
低い丘にある。
いすみ鉄道が三セク化された80年代後半に導入された車両だ。
菜の花をイメージした黄色が目印だ。
外観は、現役で走っている車両とほぼ同じだ。
しかし中に入ってみると、古めかしさが漂っている。
この車両の隣りにある『カフェTKG』で購入した定食やアイスを、車内で食べることができる。
美味しい卵かけご飯を、のんびりとした田園風景を見つつ賞味できた。
高い丘にある。
113系は、横須賀線や総武快速線、外房線などで走っていた車両だ。
スカ色という、ネイビー色とクリーム色の2色に塗装されている。
個人的には、ポッポの丘の全車両の中で一番懐かしい。
子供の頃に横須賀線のこの車両を目にした時に、キラキラ輝いて見えた。
もし113系スカ色に出会わなかったら、鉄道好きにはなっていなかっただろう。
隅から隅まで眺めて目に焼き付けようとしたが、無理だった。
懐かしさで涙がこみ上げてきたからだ。
受付兼売店の車両は、千葉都市モノレールの1000形だ。
開業した80年代後半に導入され、今も現役で活躍している。本来は懸垂式で浮いて走るため、車両の床が地面に着いている姿は珍しい。
中に入れる車両は他にもある。
例えば、丸ノ内線400形。
営団地下鉄時代に活躍した、真っ赤な塗装に白いラインの車両だ。最近走っているリバイバル塗装車両の、元デザインといえる。
中は、子ども向けのプレイコーナーとなっている。
展示されている車両は、保存会によって管理されている。
塗装が劣化した場合などは、修理が行われる。
例えば国鉄103系は、以前は中央線カラー(オレンジ色)だったらしい。
今回訪れた際は、京浜東北線カラー(水色)になっていた。
いずれも、今では見られない華やかな全面塗装だ。
懐かしい車両が、のどかな丘陵地帯に並ぶいすみポッポの丘。
やや駅から遠いが、鉄道好きなら必見の屋外型博物館だ。
2024年5月探訪