工場夜景イベントは、根強い人気を誇っている。バスやフェリーで巡ることが多い。

全国的にも珍しいのが、静岡県富士市の岳南電車のイベント『夜景電車』だ。

このイベントでは、鉄道に乗りながら工場夜景を見ることができる。
イベントの申込みは、セブンチケットで行う。
岳南電車公式サイトのイベントページに記載された申込み可能な日から、予約ができる。
その場でもらえる特典が、ポストカードだ。モチーフは時期によって変わる。私が申し込んだ時は、夜の青い光に包まれた工場と車両の写真だった。

その他、吉原駅でもらえるのが以下だ。
・一日乗車券
・岳南電車コーヒー
・ナイトバリ勝男クン。(富士つけナポリタン味)

中でも、岳南電車コーヒーはパッケージに注目だ。岳南電車の車両や駅、工場が、黒地に白いペンで描かれ、独特の雰囲気を醸し出している。
当日の18時台、吉原駅に参加者が集まってきた。

やがて、富士山と工場が描かれたヘッドマークを付けた電車が停車する。
2両のうち、吉原側つまり後ろの車両が、イベント仕様となる。席は自由席だ。
後ろの車両の全ての窓が開けられ、涼しい風が通り抜ける。発車してすぐ、カウントダウンと共に車内の明かりが消えた。

一気に、外の光が目につくようになった。皆開いた窓に近寄って、スマホやカメラを向ける。
景色を見る際は、行儀の悪い子供みたいに座席に膝を付いても大丈夫だ。

夕暮れ時の、富士山と光を放つ工場街の姿を目で捉えることができた。
往路は、夜景観光士の資格を持つ車掌によるガイドが行われた。

吉原〜ジヤトコ前の一部のプラントがオレンジ色なのは、「三菱フードテックという食品加工の工場であり、オレンジ色は虫が嫌うため」という。

最も工場の雰囲気に浸れる岳南原田〜比奈では、電車が日本製紙の建物の間を走っていること、また錆びているのは年季のせいだけでなく「天然水に含まれる成分によるものであり、上質な水を使用している証拠」とアナウンスがあった。

その他、同じ製紙工場でもトイレットペーパーなどの日用品を作る会社と雑誌などの書籍用紙を作る会社があること、鉄工場は製紙工場とは構造が異なっていることなどを、解説で知った。

ガイドのお陰で、深く調べないと分からない沿線の知識を得ることができた。

列車は、終点・岳南江尾に到着する。
走っている間に、夕暮れから夜に移り変わっていたのを知る。
今度は、岳南江尾側の車両がイベント仕様となる。停車中に、スタッフが窓を開閉する。
皆移動して、往路とは反対側の席に陣取る。発車して再び、消灯が行われた。

復路では、ガイドがない。ひとりで来た参加者は、自分のペースで景色を眺める。グループで来た参加者は、お喋りしながら景色の撮影に勤しむ。
次々と現れる工場の夜景に圧倒された。

煙突から放つ白い煙が、暗い空にたなびいている。

複雑なパイプとふわりとした煙が、煌々と照らされる。

そして比奈〜岳南原田の製紙工場では、間接的に照らされたパイプだらけの光景を見ることができた。

夜の帳が降りた吉原に戻ってきて、車掌から参加へのお礼がアナウンスされる。
温かい拍手が湧き起こった。「大満足!」と言っている人もいた。
時間帯や参加人数によっては、スタッフによるアフターツアーが行われる。吉原駅南口の鈴川港公園の津波避難タワーから、富士市の夜景を眺めるツアーだ。

この避難タワーは他と異なり、平時でも開放されている。屋上から、北に富士山と街並み、西に田子の浦港を見ることができる。

富士山方面を見ると、裾に沿って工場の明かりがきらめき、白い煙が流れていくのも分かる。

田子の浦港方面を見ると、工場や建物の光が水面に反射する光景が見られる。
自然と工業が合わさった、富士市ならではの夜景といえる。

岳南電車の『夜景電車』は、暗い電車の開いた窓から工場夜景を眺められるイベントだ。

景色はもちろん、参加特典、沿線の知識が分かるアナウンス、アフターツアーも見どころだ。
違う季節に、また参加してみたい。
2026年4月参加