全国には、魅力的な特急が多数存在する。

中でも近鉄のひのとりは、観光ではない特急でありながら絶大な人気を誇る。
特急ひのとりは、近鉄名古屋と大阪難波を結ぶ特急だ。

人気の理由は、車体のデザイン、計算された座席、快適なサービス、停車駅の少なさなどだ。
関東民の私には、憧れつつもなかなか乗れない存在だった。
名古屋に用事ができたのを機に、乗る計画を立てた。

土曜の朝7時半に近鉄名古屋駅に行き、特急券を購入しようとした。
しかし、ひのとりの人気を舐めていたことを思い知った。
10時発の便まで、全ての座席が埋まっていたのだ。
約2時間半、名古屋で待つこととなった。
事前にネット予約をする必要がある。
名駅のカフェで待ち、出発時刻の15分前に近鉄のホー厶にやって来た。

特急のホームでは、写真を撮る人が後を絶たない。
撮り鉄だけでなく、普通の観光客もスマホやカメラを構えている。

真っ赤な車両が入線してきた時は、写真に収めようとする人が一際増えた。

ひのとりは、真っ赤な車体に黒い横線の装飾、そして金色の鳥のエンブレムが特徴だ。
強さとしなやかさを感じさせる。

座席は、シェルバック式を採用している。
リクライニング時に動く部分と背もたれが分かれている構造だ。
この構造により、「後ろに倒します」といった声をかけることなく、好きなタイミングで好きな角度にリクライニングが可能となる。
他の特急や新幹線でも採用して欲しい構造といえる。
ひのとりは1編成に2か所、自販機コーナーを設けている。
インスタント飲料やお菓子の他、ひのとりグッズもある。

さらに、コーヒーを挽いたりインスタント飲料のために熱湯を提供したりする機械も並んでいる。

カップの塗装はもちろん、車体と同じ赤色に金のエンブレムだ。
捨てるのはもったいない。
出発時刻を迎えた。
名古屋を出て、電車は地上に登っていく。

しばらく、JR関西本線と並走する。
名古屋近辺の市街地を、高架から見下ろす。

三重県に近づくほどに、建物よりも田園が増えてくる。
愛知県と三重県の県境は、木曽川だ。

下流で海に近いこともあり、川は広大だ。
並行する橋もスケールが大きく見える。

長島と呼ばれる中州のような地域を経て、次は長良川を渡る。

さらに狭い中州を通って、揖斐川も渡る。
いずれも、水平線は遥か遠くだ。
鏡のように空を映す水面が美しい。

列車は田園地帯をほぼ直角にカーブしていく。

先ほど川で並走していた橋と交差する。
しばらくして、桑名を通過する。

南下していくと、田園の向こうに工場街が見えるようになる。
四日市コンビナートだ。

煙突によっては、白い煙をもくもくと噴き出している。

列車は田園から町並みに移っていき、近鉄四日市を通過する。
栄えている町を通過する様に、不思議な感覚を抱いた。

再び、田園と工場街の組み合わさった景色の中を走る。

工場街を過ぎ、のどかな風景に変わっていく。

津が近づくと、高い建物が増えてくる。
名古屋を出て初めての停車だ。
乗降中、「次は鶴橋まで止まりません。ご注意下さい!」という緊迫したアナウンスが流れる。
奈良県をすっ飛ばして、大阪の中心地までノンストップという事実に、改めて驚いた。

列車は津を出発し、広大な田と畑、時折川といったエリアを走っていく。
ふと、全力で走っていたのにスピードを落とした。

見えてきたのは、中川デルタという三方向の路線が交わるジャンクションだ。
直進すれば伊勢中川に着くが、大阪線方面にカーブすることで、止まらずに向かうことができる。
ヘアピンカーブなので、ゆっくり走る必要があったのが分かる。

名古屋線から大阪線に入ると、山並みが見えるようになる。

三重県でも、より自然豊かな地域に入ったのが分かる。

建ち並ぶ住宅も、名古屋線沿いに比べて高さに差があるように見える。

名張の辺りで、田園と思いきや菜の花畑になっている農園を通過する。
畑の脇では、撮り鉄が特急の通過を待っている。
やがて列車は山に入り、奈良県の県境を抜けていく。
奈良県に入ると、秘境といえる地域を走っていく。

山に囲まれた集落とトンネルが交互に現れる。
たまにショッピングモールと新興の宅地が建つエリアも見られる。

大和八木に来ると、高いビルもあり、賑わっているのが分かる。
大阪教育大前からは、大阪府に入る。
それなりに建物が多い、郊外を走っていく。

大阪らしく、ポップなたこ焼きの店もある。

八尾市に入ると、町並みの先にあべのハルカスが聳える光景を見ることができる。

要塞のような布施を通過すると、ハルカスだけでなく難波のビル群も見えてくる。
やがて、久々の停車駅・鶴橋に停車する。

駅の周りは、焼肉屋の看板とネオンが犇めく。
列車は鶴橋を過ぎてから、地下区間に入る。

各駅に停車し、終点・大阪難波に到着する。
およそ2時間の長い旅だったが、座席と飲み物、移りゆく景色のお陰で快適に過ごせた。
難波からは、道頓堀へ向かった。

グリコの看板の前で撮影する人々がたくさんいる。
多くの観光客が、橋とつながる商店街を行き来していく。
いつ来ても、賑やかだ。

ひのとりは、魅力的な車体、快適な座席、自販機サービスがウリの、名古屋と大阪を速く行き来できる特急だ。

関東の私鉄にはない特徴がたくさんあり、貴重な乗車体験となった。

また機会があれば、ネット予約して乗りたい。
2026年3月乗車