大阪メトロ千日前線に乗っていて桜川に近づくと、阪神線と乗り換えられることがアナウンスされる。
実は阪神だけでなく、南海とも乗り換えができる。
訪れてみると、阪神は地下駅ながら大きな看板で桜川駅の存在をアピールしている。
一方で南海は地上駅にも関わらず、駅舎が小規模で小さく汐見橋と表示されているのみだ。
これは、阪神線が難波や三宮といった大きな駅に繋がる路線なのに対し、南海線が岸里玉出までしか伸びていないマイナー路線だから、といえる。
南海汐見橋線は、汐見橋〜岸里玉出を結ぶ、南海の支線のひとつだ。
本来は高野線の一部だが、汐見橋線という通称が付けられている。
高野線が開業した1900年は、汐見橋を起点としていた。
しかし難波から直通する高野線が増え、1985年には高架化の影響で岸里玉出で分断されるに至った。
全6駅で、所要時間は約10分。
車両は、2000系という1990年代に造られた車両が使われている。
2両しかなく、本線や高野線と比べて短い。
方向幕には「汐見橋ー岸里玉出」とあり、その区間だけをピストン輸送しているのが分かる。
汐見橋の駅舎は、阪神高速の脇にひっそりと建っている。
外壁の一部にはアートが施されている。
モチーフは、街を散歩するネコだ。
高速道路に遮られがちなのがもったいないほど、洒落ている。
中に入ると、木を組んだ高い天井と、昔の南海電車の路線図に目が留まる。
昭和の頃からある木製の屋根が、ホームを覆っている。
柱には、古いレールが使用されている。
電車は汐見橋を発車し、阪神高速と並行して走っていく。
高速道路と反対側には、運送の拠点となる営業所などのビルが並ぶ。
車がひっきりなしに通っていて、古い建物だけでなく新しい建物もある。
それなのに、どこか忘れ去られた雰囲気が漂う。
JR大阪環状線の高架を潜り、しばらく走ると、芦原橋に着く。
出発してさらに進むと、高速の高架がうねうねとカーブしているのが見える。
流通センターだけでなく、工場も増えてくる。
線路に雑草が生えていると思っていると、木津川に着く。
阪神高速とは離れ、次第に住宅が増えてくる。
津守に着くと、学生が全員降りた。
駅とほぼ直結の、高校があることに気づく。
どうやらこの路線は、通勤で使う人は少なく、通学で使う学生の方が多いようだ。
高校と直結の駅を去ると、列車は大きな公園や下水処理施設を抜けていく。
やがて、一軒家が線路に沿ってびっしりと並ぶエリアに入る。
西天下茶屋に到着する。
レールが単線になり、岸里玉出に到着する。
本線と乗り換えられるものの、ホーム同士には距離がある。
改札を出ると、宅地が広がっている。
頻繁に電車が通るので、閑静とは言い難い。
ホームに戻り、次の汐見橋線を待つ。
待ち時間は30分と長かったが、全く苦にならなかった。
本線ホームに普通が停まったり、特急ラピートやサザンが通過したりと、列車の行き来を見ることができたからだ。
本線だけでなく、大きくカーブして走る高野線も遠くに見ることができる。
私が待つ間は、本線の急行と高野線の特急が、同時に難波へ向かう様子を見ることができた。
南海汐見橋線は、高速道路や工場といった都会のモチーフを眺めることができ、古い駅舎や多様な車両を見ることができる、ローカル線だ。
2025年10月乗車